1983年に前身となる会社が誕生したYEデジタル Kyushu(YDK)は、2022年から「日本のものづくりを元気にするNo.1企業を目指して。」というパーパスを掲げています。このパーパスの実現を推進するため、設立40周年を迎えた2023年にYDKが立ち上げたのが、ものづくりのデジタル化を総合的に支援するブランド「MONQX(モノクロス)」です。
ものづくりを意味する「MONO」に、Quality(品質)の意味をプラスした造語「MONQ」、そこにDXの「X」を重ね合わせて名付けられた「MONQX」は、ERPコンサルティング、Web-EDIサービス、デジタルサイネージサービス、クラウドマネージドサービス、セキュリティサービス、運用保守サービスといった6つのサービスで構成されています。
設立以来、長年の実績が高く評価されてきたYDKは、ものづくりに強いシステム会社としてのブランドイメージを着実に築いてきました。そんな中で、新ブランドの立ち上げを通したリブランディングは、次の時代を迎えるための挑戦でした。
この挑戦の裏には、どんなストーリーがあったのでしょうか。リブランディングのプロジェクトを中心で担ってきた、YDKのマーケティンググループに所属する2名の社員にその舞台裏について詳しく聞きました。

※ERP(Enterprise Resources Planning ):会計、生産、人事などの企業に必要なあらゆるデータを一元管理するためのシステム
※EDI(Electronic Data Interchange):注文書や請求書など、企業間の取引データのやりとりを自動化するためのシステム。EDIの中でもWeb-EDIは、ブラウザから入力したデータをインターネット回線でやりとりする点に特徴がある。
目次
YDKの40周年を機に、リブランディングのプロジェクトがスタート
ーー2023年に製造業のデジタル化を支援するブランド「MONQX」が生まれたそうですね。誕生には、どういった背景があったのでしょうか?
2023年でYDKが40周年を迎えるにあたり、弊社のパーパスの実現に向けた取り組みを加速させるため、ブランドのリブランディングに踏み出しました。YDKが提供するサービスの価値と見せ方を今の状況に合わせて再定義することが必要だと考えたからです。
実は、もともと「MONQX」の前身にあたるブランドはあったのですが、デジタルを取り巻く環境は刻々と変わっていて、YDKが提供するサービスもアップデートを繰り返していました。こうした状況をふまえると、旧ブランドではサービスの真価を伝えきれないと感じていたんです。

それから、近年は大手企業のものづくりに弊社のサービスを導入いただく機会が増えてきていました。
こうした背景もあって、YDKのブランドを刷新する時期にきたんじゃないかと社内で本格的に話し合うようになりました。サービスの価値をわかりやすく伝えることは、より多くのお客様への貢献にもつながるので。
ーー前身のブランドは、どんなブランドだったのですか?
旧ブランドは、「きっとe!」という名称でした。Kyushu Information Technologyグループの頭文字のKITを取って名付けられたようです。ポップで親しみやすい点は良かったと思うのですが……。
正直言うと、展示会でブランドをご紹介するときに、私は照れちゃっていましたね(笑)。なんというか、気持ちの面でも対外発信しにくいなと感じていました。やはり、ブランドの名称やイメージにも時代の流れがあると思うので。
私もそうです(笑)。「きっとe!」の名称とイメージには、課題があると思っていました。パッと見たときに、ものづくりに関連したブランドだとわかりにくいという点もありましたし。

「きっとe!」のブランドロゴ(左)と、「MONQX」のブランドロゴ(右)
ーー「きっとe!」の頃は、周囲の反応はどうでしたか?
展示会に関して言えば、しっかり説明すればサービスの特徴を理解していただけていたものの、ブースを見ただけで足を止める方は少なかったです。「どんなサービスかわからないな」と素通りされていた印象でした。
展示会ではファーストインプレッションが大切なので、ブランドイメージを変えれば出会いの幅が広がるはずと思っていましたし、同様の意見は社内でもたびたび耳にしていました。
社員自身がブランドに自信を持てていなかったせいか、当時は対外発信への社内の温度感は今ほど高くなかったように思います。
名称は769案から「MONQX」に決定。「対外発信のスイッチが入りました」
ーーそこから、「MONQX」はどのように生まれていったのでしょうか。
サービス内容自体はすでに既存のものがあり、とにかく名称を新しくしたかったので、まずはネーミングを考えていきました。769案も最初に名称の候補を挙げて、そこから徐々に絞っていき、最終的には全社や営業部の投票を通して決めました。
その他の人気候補を見ても、「モノ」が付いた名前が多かったですよね。やはり、「ものづくり」への思い入れの強さがあったんだと思います。

「モノタス」という名称も人気だったよね。でも、最終的に「MONQX」に決まって良かったと思います。「QX」の部分には、「無限の可能性」や「変革」、「DX」の他に「製品をクロスさせていく」という意味もあって、いろいろなサービスを展開しやすい名称になりました。
実際、2024年には既存の5つのサービスに加えて、6つめにセキュリティサービスの「MONQX F Security」をリリースしました。
名称も新しくなったことで、やっとブランドとして胸を張れるようになりましたよね。
ーーでは、「MONQX」が立ち上がってからは、社内の機運もだいぶ変わったのでしょうか。
だいぶ変わりましたね。「きっとe!」のときは、今よりも提供サービスが限られていたこともあり、関わる社員も限られていました。それが「MONQX」になってからは社員全員が関わるようになって、社内の一体感が強まったんです。それによって、対外発信に対してもポジティブな空気が社内に生まれました。やっとスイッチが入ったというか。
具体的には、コーポレートサイトのリニューアルだけでなく、IT製品の比較サイトなどのWebメディアへの出稿も実現しています。さらに、以前にも増してプレスリリースを発信したり、会社近くの駅前に大きな広告パネルを設置したりしました。
ブランドロゴを名刺に入れたことも、印象深い変化でした。名刺には、社員が担当するサービスのシンボルカラーのロゴをあしらっています。社員がお客様先を訪問する際、サービス理解につながる会話が名刺から生まれていると好評です。
展示会のためにブランドロゴを入れたポロシャツも作ったのですが、それを着ている社員を見る度に、象徴的な光景だなと嬉しくなります。対外発信が盛り上がっている実感が沸きますね。

リブランディングがクロスセルの増加に貢献
ーー「MONQX」を立ち上げたことで、他にはどんな効果がありましたか?
いくつかありますが、その中でも複数サービスのクロスセルの増加が印象的でした。特にERPコンサルティングとWeb-EDIサービスがセットで伸びています。導入する場合、相互に連携させながらデジタル化を進めたほうが、スムーズなんです。
以前のブランドである「きっとe!」の時代は、ERPコンサルティングとその他のサービスのつながりがわかりづらい状況でした。ERPコンサルティングはベンダーが開発したシステムを活用している一方で、Web-EDIサービスは自社開発したシステムで構成されていたからです。このため、ERPコンサルティングをご案内する流れから、Web-EDIサービスのご紹介につながりにくい実情がありました。

そこから、今はサービス同士のつながりをわかりやすく設計して、それぞれのサービス名の頭に「MONQX」を冠したことで、関連性を可視化できるようになりました。トータルソリューションの価値をより伝えやすくなったんです。実際、すでにお付き合いのあるお客様から、「他にもこんなことができるんだ」と別のサービスのご相談もいただけるようになりました。

それから、パートナー企業の方にご紹介いただく機会が増えたこともクロスセルが伸びた要因です。やはり、以前は点と点だったサービス同士の関連性が線になったことで、お客様に紹介がしやすくなったと聞いています。
展示会について言えば、リブランディングを機にブースの作り込みを強化したこともあり、ファーストインプレッションが改善して、足を止めてくれる方が増えたのも嬉しい変化です。
お客様に選ばれる理由は、製造業への豊富な知見と社員への信頼

ーーYDKは前身の会社が設立されて以降、長いお付き合いのお客様が多いと聞きました。お客様に選ばれ続ける理由はなんでしょうか?
もとを辿るとYDKの母体が製造業なので、長年にわたってものづくりについての業務知識が蓄積されていることが、お客様から信頼いただいている最大の理由だと思います。
生産管理システムが注目され始めた時代から現在に至るまで、YDKはものづくりを支えるシステム開発に携わってきました。もう何年もシステムの導入・構築をお任せいただいているお客様も少なくありません。また、システムの運用保守についても豊富なノウハウを蓄積しています。
さまざまなフェーズにあるお客様のシステムを長年にわたってお任せいただくことで、多くの実績を積み上げてきたことが強みですね。
それから、お客様からご相談を受けたときにたとえ難しい課題であっても、なんとかお応えしようと奮闘する社員が多いことも理由かもしれません。
実際、お客様から個人指名される社員も多く、信頼の深さが現れているなと思います。お客様と導入の達成感を分かち合った話や、社内イベントに招待された話もよく耳にしますね。
お客様との間に公私を超えた絆が芽生えるのは、社員の人柄やチームワークの良さ、社風も影響しているなと感じています。
全国展開で「製造業のデジタル支援といえばMONQX」と言われる存在へ

ーー最後に、今後の展開について教えてください。
今後は、「製造業のデジタル支援といえばMONQX」「YDKといえばMONQX」とすぐに連想していただけるようなブランドに育てていきたいですね。
その理想を実現するために、まずは日本全国に「MONQX」を発信していきたいと考えています。そこで、2025年以降は九州以外の展示会にどんどん出展する予定です。これまでも展示会への出展には積極的でしたが、福岡県をはじめとする九州エリアの会場がほとんどでした。
全国展開に向けてすでに動き出していて、2025年1月には東京ビッグサイトで開催された「スマート工場 EXPO」に出展しました。東京ビッグサイトでの出展は今回が初めてで、「MONQX」の誕生で社内のムードが盛り上がったことが、国内最大級の展示場でのお披露目につながりました。
こうした動きもあって、最近は九州だけでなく関東・関西からのお問い合わせも増えています。こうしたチャンスにつなげるためにも、今後は展示会に限らず、あらゆる手段で認知を高めていきたいです。